雑司が谷「ターキー」1杯550円のラーメンで昭和を味わう

山路 力也

【ノスタルジックな一杯】雑司が谷の住宅街に馴染む一軒のラーメン店

ターキー店舗

1975年創業のターキー。雑司が谷の街並にすっと馴染む。

池袋の南、目白や護国寺にも近い「雑司が谷」は、昭和の面影があちこちに残る閑静な住宅街。都電荒川線の走る音が聞こえて来るこの場所は、室町時代に安置された鬼子母神や古い街並を目当てに、時折観光客なども訪れます。まるで時が止まったかのような雑司が谷の細い路地を歩いていると、その街並にすっと馴染むかのように「ターキー」はあります。

ターキーのメニュー

ターキーのメニュー。ラーメンの他にもご飯ものや一品料理が充実。

小さなテーブルが3つほどにカウンターだけの、昔ながらの「町の中華屋」。創業は昭和50(1975)年と、今年で41年目を迎えるターキー。壁に貼られたメニューを眺めてみると、ラーメンよりも最初にギョーザの文字が書かれています。他にも炒め物やご飯ものも充実。昼からビールと餃子でのんびりと過ごしている地元に住むお客さんや、ガイドマップ片手に店内をキョロキョロしている一見の観光客など、この店には様々な人が入れ替わり立ち替わり入って来ます。

店主の甲立一雄さん

創業以来41年、休まず店に立ち続ける店主の甲立一雄さん。

厨房の中で黙々とラーメンを作っているのは、店主の甲立一雄さん。麺を茹で、チャーシューを切り、丁寧に盛りつける。その一連の動きはまったく淀みがなく、長年の経験を感じさせます。調理が終わると店内のテレビにふっと目をやり一息。そして、常連客とひと言ふた言交わした後、ガイドマップを見ているお客さんに「どこから来たの?」と優しく声を掛けます。そしてまた黙って仕込みや調理に戻るのです。甲立さんは創業以来の41年間、毎日こうやって過ごしてきました。以前はそこに優しい笑顔の奥様もいて、お二人で営まれていましたが、数年前から身体がきつくなったということで、お昼時の忙しい時以外は甲立さんお一人で営業しています。


長年継ぎ足した醤油ダレとていねいに取ったスープは奥深い味わい

ターキーの「ラーメン」

ターキーの「ラーメン」。油が浮かずすっきりとした味わい。

「ラーメン」は一杯550円。醤油の色が濃い目のスープにしなやかな中細麺が横たわり、程よい厚みのモモ肉のチャーシューと青菜、ネギ、メンマといたってシンプル。これぞ「ノスタルジックラーメン」という佇まいで目の前に置かれます。スープの表面には油らしい油は浮いておらず、スープを取る時に出た油がほのかに浮かぶのみ。レンゲで一口スープを啜ると、その奥深い味わいにきっと驚くことでしょう。

「材料はケチらずに使っているからね。醤油ダレも長年ずっと継ぎ足して使っているから美味しさが増すんだ」と語る甲立さん。確かに厨房にあるスープの寸胴に目をやれば、寸胴からあふれるばかりに鶏ガラなどの材料がたっぷり入っています。スープが濁らないように火加減を気にしながら、ていねいにゆっくりと旨味を抽出したスープ。そして、鰻のタレのように継ぎ足して旨味を重ねていった醤油ダレが合わされば、それはもう至福の味わいになるのです。

チャーシューがことのほか美味しいのも、切り置きをせずに注文を受けてから一枚一枚包丁で切って乗せるから。ラーメンに負けず劣らずの人気を誇る餃子も、注文を受けてから餡を皮で包んで焼きます。効率化されている今のラーメン店の厨房での作業と比べると、甲立さんの仕事はどこか前時代的で非効率なようにも見えますが、このひと手間ふた手間が美味しさになって現れてくるのです。それはこの店のラーメンとギョーザを食べてみれば分かります。

オープンしても数年も持たずに消えていく店が多い中、なぜターキーは41年ものあいだ営業を続けてこれたのでしょうか。「当たり前のことを当たり前に毎日やっているだけ。手を抜いたら美味しいものなんて作れないよ」。笑ってそう話す甲立さんの言葉に、その答えがあるのかも知れません。

<DATA>
■中華そば ターキー
住所:東京都豊島区雑司が谷1-24-2
TEL:03-3981-7648
営業時間:11:30~15:00,17:00~20:30/11:30~20:30(土日祝)
定休日:火曜
アクセス:都電荒川線「都電雑司ヶ谷停留場」より徒歩約5分
地図:Yahoo!地図情報

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